エトセトラエトセトラ
とても古い映写機が映し出したような、不鮮明で淡い映像が次々と僕たちを追い越していっていた。いや、正確にはその映像の中を僕たち自身が落下していたのだろう。
映像は、「時間」だった。
落下タイマーが落下した瞬間の映像が次々と流れて通り過ぎて消えていっていた。
最初のいくつかはあの骨董屋で、店の主人が不注意で落下タイマーを落としてしまった場面だった。次に彼女が自宅で皿を落とした場面、それから僕の家で検証のためにマグカップを落とした場面、仕事先で彼女がボールペンを落としてしまった場面、そのあとしばらくは彼女が自宅でひたすらマグカップを落とし続ける場面が続いた。
そして最後に、僕たちが一緒にソファから転げ落ちた場面。
その映像が遠のいて見えなくなったと思ったとき、唐突に落下は終了した。
僕たちは元通りにソファの上に並んで座っていた。
はあはあと息を荒げ、暴れ狂う心臓の鼓動を感じながら。
彼女は俯いて胸を片手で押さえ、肩で息をしていた。
二人の手の中に収まったままの落下タイマーの針は、真上からひとつ逆向きに進んでいた。
混乱が治まりきらない僕の頭の中に、あの老爺の低くしわがれた声が木霊のように響いていた。
――『もう清算しましたか?』
落下タイマー
("時間"って魅力的で、恐ろしくもある)
end