エトセトラエトセトラ
唇を離してすっかり茶色に戻った瞳を覗き込む。鼻先が触れ合うような距離のまま、僕は彼女に話しかけた。
「ねえ、」
「……なに?」
律儀な彼女は囁くように返事をする。
「吸血鬼に心を奪われたらどうなるの」
数秒の沈黙のあと、彼女は静かに答えた。
「……一生、逃れられなくなるよ」
忠告のように、彼女は呟く。
「うん」
「ずっと血を吸われ続けなきゃいけなくなるよ」
「うん」
「貧血になっちゃう」
「うん」
「だから、」
「ん?」
「……奪われないようにしなくちゃだめだよ」