‐彼と彼女の恋物語‐
優子さん、優子さん、優子さん。言いたいことがたくさんあるなにまるで纏まらず息切れのように霞んでいくだけ。
それでも思いは痛いくらいに伝わっていく。
「バイトは辞めてもいい、たまにコーヒー飲みに来てくれたらね」
くすり、唇で緩やかな曲線をつくる優子さんが冗談混じりの本気をぽろりと記憶に落としていく。
頭のなかは混乱し過ぎていてまともなことが言えそうにない。もうどうしたらわからない。
と、ふわりと香るコーヒーの香りに包まれた。
それが抱き締められたのだと気づくまでには数秒要した。彼のとは全く違う細く長い腕が羽のように自らの身体に寄り添う。
「あなたは、大丈夫」
「っ………」
「だから怖がらないでいい」
「―――……ゆっ」
「逃げないで、飛び込みなさい」
倒れるような弱い男じゃないでしょ?耳許で無邪気な雰囲気を漂わせ独特の空気感でなにかを促そうとする優子さん。
「――…(彼に、飛び込む)」