‐彼と彼女の恋物語‐



「ふぅー…」



やっと閉まったドアを確認して安堵のため息を吐く彼女。肩より少し長い髪を一つに結い部屋着同然なスキニーとTシャツ姿はどこかの主婦にもみえる。


実際彼女の仕事は主婦と似たり寄ったり、というか一緒。なので昼間は物凄く暇だったりする。


ハウスキーパーの仕事は毎日やっているから大体は軽く掃除して洗濯するだけ。


毎日飽きるほど掃除しつくした家は文句なしで綺麗。


やりがいはないがあのイケメン作家の為ならとよく分からない理由をつけてキッチンに向かう。


途中、バスルームに行きドラム式の金が掛かってそうな洗濯機につい先ほどまでイケメンが着ていた服を投げ入れる。


よし、洗濯終わり。産業革命の名残を残したそれは乾燥機付きである。


それから再びキッチンに。まずは食器を片付けよう、と二人分のコーヒーカップと何か格好いい感じに英語が描いてある皿が数枚。


オレンジの香りのする洗剤でわしゃわしゃと泡をたてれば数分で終わってしまう。



「やることないな」



ぽつりと呟かれた彼女の独白はいとも簡単に空気に消える。


いつもならここで仕事場に行き、先生姿の彼に暇だ暇だと何かしらの仕事をもらう。主に『本読んで感想聞かせて』という静かにしてろ命令だけど。



それでも仕事は仕事。やることがあったのでここまで時間をもて余すことなんかなかった。



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