‐彼と彼女の恋物語‐



テレビでも観ようかな、と力なくダイニングにあるソファーに腰を下ろす。



「にゃー」



と、忘れかけていた存在が声を発した。どこにいたのかなんて検討もつかないくらい神出鬼没なやつ。



「ミーヤ…今起きたの?」



長い手足を気の済むままに伸ばす、白猫。

ミーヤと呼ばれた猫はぶるぶると尻尾の先まで震わすと眠気が覚めたのかタッタッと軽快な足取りでソファーに上がった。


小さい顔に大きな瞳、白い柔らかい毛。全てが可愛らしく座る姿でさえも愛らしい。


何事にも無関心な彼女だってつい手を伸ばす。


カーテンの隙間から漏れる陽射しに目を細める彼女はふと思い出したようにミーヤに声をかける。



「先生、行っちゃったけど」



もちろん返事が帰ってくるわけなどないが、一様報告だけはしておく。


いなくなったわけじゃないと、教えてあげたくて。



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