エゴイストよ、赦せ
「あのコ、『マフラー貸してくれ』とか、いきなり言ったんでしょ?」


僕は声にならない返事をする。


「どうしたら良いのかわからなかったみたい。何か言わなきゃって思ったらしいんだけどね」


ローサの顔が思い浮かぶ。

マフラーを貸した日の。

“二回目”に会った日の。


「きちんとお礼も言えなかったから、今度は自分が、あのひとに貰ったものを返すんだって。あの日みたいな笑顔で笑ってくれたらいいなって」


絵莉の声に、ローサの声が重なって、僕の胸を刺した。


ローサは、何も求めていなかった。

僕に何かを求めてなどいなかったんだ。



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