蜜色トライアングル(番外)~Dignified flower
「由弦、お前も人のこと言えないだろう。お前のせいで木葉がどれだけ泣いたことか」
「啼かせたことは否定しないけどな。でも最初は、もっと啼いてたんだぜ? 鏡とか風呂とか目隠しとか……」
「イヤ、そっちの『なく』じゃなくてだな……」
「牛乳で言えば特濃から低脂肪乳になった感じか? 掲載のためにいろいろ端折ったからなー。オレ的にはちょっと不完全燃焼気味だな」
「それ以上やったら弟と言えど容赦はしない。お前は粉ミルクで充分だ」
氷のような冬青の声が由弦の耳を打つ。
凛花は蕎麦の皿が空になったところでようやく顔を上げた。
ウーロンハイを一口飲み、はーっと大きく息をつく。
「あー、なんかさ。こうなったら無制限一本勝負でもやれば?」
「どういうことだ?」
「例えば。……あのホテルに3人一緒に来ちゃった。とか」
「……」
その場面を考えるだけで恐ろしい。
無言になった三人に、凛花はカラカラと笑う。
「そこから木葉の争奪戦をするの。死んだ奴から脱落してくってわけ」
「……」
「死して屍拾うものなし。敗者の亡骸はやがて風化し、記憶の彼方に消えていく……」
「ってそれ、全く別の話になってんじゃねえかよっ」