期間限定の婚約者
 わかってて、ワンピースの用意をしたのはお義母さんなのに。
 これを着なければ、見合いさせないって、脅したのに。

 私はぎゅっとスカートの裾を掴むと、両目をつぶった。

 似合わないとわかっている大人びたワンピースが、恥ずかしくて恥ずかしくて、心が苦しい。息も苦しい。
 新垣さんに、見られたくないのに、これを着なければ新垣さんに会えない。

「まさか、貴恵さんがこういうセッティングをするとは」
「あら、意外だったかしら?」
「ええ、意外でした」

 新垣さんとお義母さんが意味ありげな笑みを浮かべて会話をしている。
 私はその輪の中に入れずに、ただただ聞いているだけ。

 二人には体の関係がある。
 私よりもお義母さんとのほうが、親密だから会話が弾むのは当たり前なのだろう。

 私のわがままで、セッティングしてもらったお見合い。
 4か月間の期限付きの交際。
 4か月の間に、私が新垣さんに振り向いてもらえれば……。

 振り向いてもらえるのかな?
 お義母さんいわく、新垣さんには忘れられない女性がいるって。
 それ以上に魅力のある人だと想ってもらえなければ、私の恋は4か月で終わるんだ。

 私の四か月の恋。
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