期間限定の婚約者
「さて、あとは貴方たちに任せるわ」
 お義母さんが席をたち、部屋を出ていった。

 新垣さんと二人きりになり、私は鞄の中から、ホテルのカードキーを取り出し、テーブルに置いた。

「あの……母が、これを」
 恐る恐るカードキーを、新垣さんのほうへと押し出した。

 フッと呆れた笑みを零した新垣さんが、カードキーを手にする。
 クルリと大きい手の中で回転させた新垣さんが、部屋番号が書かれた面を上にして、テーブルに置いた。

「君はいいの、これで?」
「え?」
「ホテルのカードキーを差し出すってことは、この前の見合いみたいに襲われる可能性があるってこと。男女二人で密室にいくっていう意味くらい知ってるよね?」

 新垣さんがカードキーをいったん、私のほうに押し返した。

 意味は、わかっている。わかってて、今日は来た。
 四か月だけでも一緒にいたい。恋人になりたい。

 たとえ、それが体の関係だけで、終わってしまってもかまわないの。

「わかって、ます」
「そう。なら上に行こうか」

 新垣さんがカードを手にして、席を立った。
 

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