Mail
旧友
 あのメール以来、あたしは昔のことを詩季に話せていない。詩季も聞いてはこない。
 多分詩季は、相手が何をしたくて、何をしたくないのかがわかる人なんだ。たとえゆっくりでも、相手のペースに合わせられる人。
「すごいな……」
 あたしはこの間のメールを見ながら思った。
 ふと時計を見ると三時を過ぎていて、外はうっすらと明るくなりつつあった。
「やばっ!」
 あたしは慌てて着替え、いつものコンビニへと向かった。

 コンビニへ行く途中、誰ともすれ違わなかったのに、怖かった。
 あたしにとっては、“外”という世界自体が恐怖なのだ。

 いつものダルそうな店員の前を通り過ぎ、いつもの弁当や、そのほかのいろいろな物を買い、店を出た。
「……櫻?」
 あたしは名前を呼ばれた瞬間、体が強張った。こっちにあたしのことを知ってる人なんているはずないのに……。
 恐る恐る振り返ると、中学のときのクラスメートがいた。
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