Mail
 午後九時。詩季からメールがきた。
『遅くなってごめんなさい』
『遅くなってって、夜はいつもこれくらいです』『そうかな?
 んで、話したいことで もある?』
『ちょっと長くなるけど、あたしの昔の事、聞いてくれますか?』
『聞くよ』
『全部は話せないかもしれない』
『大丈夫』
 “大丈夫”って詩季が言うと、本当に大丈夫な気がしてきた。
『あたし、こっちには高一の時に引っ越してきたんです。一人で。』
『うん』
『中学は北海道の学校で。でも中三の時にあたし、イジメられて。それでも、その一年間は頑張りました。なるべく同じ中学の人いる高校には行きたくなくて、思い切ってこっちに出てきたんです。』
『うん』
『でも、なんでかわかんないけど、こっちの学校の人達に、中学でイジメられてたことが知れてて、こっちでもイジメられました』
 あたしはメールを打っているうちに、その時の事を思い出して、気づいたらパソコンの画面が霞んで見えないほど泣いていた。
『大丈夫?』
『何がですか』
『いや、泣いてるかと思って』
 メールのはずなのにどうしてわかるんだろう。『泣いてません』
 あっちにわかるはずがないと思い、そう送った。
『それならいいけど。今日はこれくらいにしておこう』
 多分、詩季は、あたしが泣いているのがわかったのだろう。
 なんでかわかんないけど、そう思った。
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