泡沫眼角-ウタカタメカド-

「すまないな」

「いえ、奏さんが謝ることないです!」


倒れたトシオがずりずりと引きずられていく傍らで、見事なコンビネーションを決めた二人は晴れやか。

片方だけ腫れ上がったトシオの頬が威力の違いを証明していくが、それはまた別の話。


これ以上、事件の話を進めるのは無理なように思われた。

言乃はもう意気消沈して無気力状態。
緩んだ空気もそれに同様。


「時間も遅くなりましたし、私たち帰ります」

「そうか。おい三バカ! お送りしろ!」

「「バカじゃありません!」」


二人を連れてきた三兄弟がピッタリ合う。

「そうだぞぅ! 三羽烏(サンバガラス)って僕が決めたんだ!」

「だぁっとけ!」

襖の奥からガツン、「ギャッ」とした後は静けさが和室に帰ってきた。


「じゃあ、お二方こっちにどうぞ」

「付け加えると、我々の名字が烏山(カラスヤマ)なンです」

「上の兄貴から青羽、呉羽、俺は黒羽だ!!」


はぁ、と曖昧に頷くと奏が恵に耳打ちした。

「こんな男所帯じゃ、訪ねてくる女性は貴重なんだ。掟にもあるくらいだからな。悪いようにはしない」


切実なんだな…とぼんやり考えながら案内されるまま、帰路につく。

また豪華な車に乗り、二人は駅まで送ってもらった。


別れ際、また何かあったら言ってくれと口々に言われたが正直なところ、あんな怖い家にはもう行きたくなかった。


――あ……チャカって何か聞くの忘れちゃった…

――朋恵さんに聞けばいいと思いますよ?

――そうだね…とりあえず帰ろう!
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