泡沫眼角-ウタカタメカド-

何故今その話を思い出したのだろう。

――…わからない


炯斗が頭を悩ませている間も香田の話は続く。


「…そして、お前は今警察に容疑者ないし、重要参考人とされている」


一瞬、耳を疑った。

ちゃんと脳まで情報を送ってから。


「うっそ、ええっ!?」

「しっ、声がでかい」


両手で口をパチンと押さえると、ちょうど料理が運ばれてきた。


「…なんだこれは」


自分の前に置かれるパフェに疑心の視線を送る香田。


「パフェッスよ」

「見ればわかる。何で私に」

「アイス溶けるから早く食べた方がいいッスよ」

「それはそうだが――」

「いや食えし」

「……」


しばらく半目な状態でパフェを見続けた後、観念したように肩を落とし、スプーンを取った。

半ば強制的に取らされたそれは体の割りに小さいスプーンで――


に、似合わねぇ…!!


吹き出しそうになるのを必死にこらえて、ハンバーグを口に運ぶ。
香田も小さくスプーンにアイスを取って食べる。


「…美味い」

「そりゃよかったッス」

香田に向かってニヤリとした時だ。


――ドクン!!
体の中で、大きく跳ねた。

「っ!!」

「…炯斗? どうした」


食べる手を止めて、こちらに手を伸ばす香田の姿が、急速に薄れていく。

――また、あの空間に行くんだな


わかっているせいか、恐怖心は生まれない。

身を任せるように、炯斗の意識は沈んでいった。

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