泡沫眼角-ウタカタメカド-

狸の頑張り娘の苛立ち


* * *

とあるビルの前。
二人の刑事が車を降りた。


「さて、行くぞ川井」

「け、警部…やっぱりやめましょう!」


しかし狸翠は笑って、震える川井の首根っこを掴むばかり。

川井が何を言っても聞きやしない。


ことはしばらく前。


狸翠警部は親切にあの生意気むすm……いや、威勢のいい息女に情報提供を持ちかけたのだが、あえなく一蹴。

一気に不機嫌になった狸翠はあろうことか、一番慎重に扱わねばならない領域に足を踏み入れようと行動を開始した。


――それに付き合わされる俺…


何度も止めた。
下手をすれば上司の雷は間違いない。
狸翠は完全にわが道を行こうとしていた。

バディなのだから当たり前なのだが、この時ばかりは思わずにはいられない。


俺ってかわいそ……じゃなくて不幸だ!


そんな刑事・川井宗悟と冬沢狸翠はエレベーターを登って、最上階の一階前で降りる。


開いてすぐにある扉には“禅在興業”とあった。


つまり、比津次会と敵対する禅在組のフロント企業だ。


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