泡沫眼角-ウタカタメカド-

その日の捜査会議では、全体が混乱したまま話が進んでいった。


ちゃんとした情報があるとすれば、被害者に死者はなく、病院に搬送された二人も命に別状はないということ。

隣のビルから狙撃したという人間や、事務所に殴り込みに入った者は未だ特定に至っていないなど、その程度。

話の途中で駆り出された四人は今一度、コーヒーを飲みながら頭を悩ませていた。


「俺の予想では狙撃は香田だと思うがな」

「なんですって?」


狸翠は大きく煙草の煙を吐き出した。


「隣のビルの上から地上の、しかも建物から出て来た人間を撃つなんてなかなか出来ない芸当だぞ」

「素人なら、当たりっこありませんね。しかも野次馬が多いんじゃ尚更だ」


なるほど、筋は通る。


「そうなれば、扱いに慣れている香田が怪しいということですね」

「そうだ」

高橋がメモを取るのを待って、朋恵は次の質問を送る。


「ここでは、日奈山の目撃情報はないのね?」

「ああ。日奈山の特徴と一致する情報は入ってない」

「因みに、そっちは日奈山についての情報はないのか?」


川井の質問に朋恵は高橋を振り返る。

朋恵が恵と電話していた時に炯斗の身辺を調べていたのは彼だ。


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