泡沫眼角-ウタカタメカド-
黙っている香田を前に、炯斗は自分から口を開いた。
「なぁ、あの日…ファントムが死んだ日に何があったんだよ」
香田はハッとして顔を上げる。
「あんたと吉野の兄ちゃんがついて居ながらにして、なんでファントムが死ぬことになったんだよ」
炯斗から繰り出される言葉に、香田は少しずつ青くなっていく。
「そんでもってあいつはこっちに戻ってきて何をしようとしてんだよ?」
「待て…なぜ、お前がそのことを知っている…?」
炯斗は香田の目をまっすぐに見つめる。
さっきよりは、落ち着いた色で、鋭くとがる視線。
「あいつが俺の中にいる所為だろうな。あいつの記憶が少しだけ見えた」
「なに…?」
「意味わかんねえってのはわかるよ。俺だってよくわかんねえんだよ。でも信じてほしい」
香田はやや頭を抱えつつ、頷いた。
しかし、あの日のことを知らないはずの炯斗があの日のことを口にする以上、信じるしかない。
ファントムとのときにその会話はしていないし、炯斗に調べる時間はなかった。
──何せ、炯斗が出ているときは自分が監視していたのだから
信じがたいことに変わりはないが。