泡沫眼角-ウタカタメカド-

関係性

* * *

香田と炯斗は真夜中近く、隣の県のとある街に降り立った。
車から出て、街頭とわずかに部屋から漏れてくる光以外は暗く寝静まっている街を見まわして、炯斗は大きく息を吸い込む。

細部の違いはあるが、ここは確かに炯斗が眠っている間に居た街と同じ場所だ。
あの世界を決定的に違うのは、ここに人が住んでいると証明する生活感。
確かにここには人が住んでいるのだという、安心感。

──現実だ…

炯斗はそれを、車で目覚めてから初めて実感したような気がした。

バタン、と車のドアが閉じる音。
そして香田が炯斗の隣まで歩いてくる。

「さぁて、行こうぜ香田さん。俺たちが初めて犯罪を犯す瞬間だ!」

「あ、ああ」

意気込む炯斗、そして混乱する香田。
何をするのかは炯斗から聞いてわかっているつもりだが、それをなぜ炯斗が知っているのか、そしてなぜ今やるのかが香田にはわからないでいた。

ファントムにはきっと了承を得ていない。
計画にも何も関係ないに違いない。


それなのにどうして自分は彼に従っているのだろうか…

先を行く炯斗の後を歩きながら香田は考える。


──この背中が…誰かに重なるから…?


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