泡沫眼角-ウタカタメカド-

「香田さん?」 『香田?』

「!?」

不意に振り向いた炯斗に重なった面影。

──あの日のファントム殿…?

確かに体を共有しているのだから、見間違えことはあるのかもしれない。

しかし今のはそういう感覚とは違った。
まさにファントムがこちらを見ていたかのような、また、懐かしき面影が見えたようなものだった。
無理やり上げられた胸の動悸を手で押さえつつ、二人は目的地に着いた。

「ここは…‼」

「おそらく、昔の禅在のアジトかなんかに使われてて…そしておそらく、あんたとファントムと吉野の兄ちゃんが乗り込んだ場所だろ?」

炯斗の言葉に、香田は驚きを隠せない。
目を瞠れるだけ瞠って炯斗を見た。

「何故ここをお前が知っている!?」

「さっきも言ったみたいにさ、ファントムの記憶だと思うんだ。俺が見たあの街は。その通りにこの街があってこの家があった。そんでもって、全てが正しいなら──」


あるはずだ。ここに。
ファントムの、もう白骨になってしまった、遺骸が。

炯斗は息を吐いて気持ちを落ち着けただけで語ることはしなかった。
一度見ている。
それをもう一度直面しなきゃいけないなんで憂鬱以外のなにものでもないが──
これが証明になり、炯斗の考えを裏付けるのだ。


「やるっきゃねえ。香田さん、ここを掘り起こすぜ」

「なん…?」

いよいよ混乱でいっぱいになった香田を見て、炯斗は暗い表情で言った。
炯斗の気持ちとは裏腹に、目の前の地面は光り輝いてる。



「あんたがずっと探してた奴が、この下にいる。」



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