泡沫眼角-ウタカタメカド-
頭を押さえつけ、炯斗はファントムを見上げる。

「えー、じゃあ何? ファントムだからファンちゃんでいい?」

『何で普通にあだ名つけてんだよ。しかもそのセンスの無さ! トシオよりひでぇ!
しかもオレはお前より年上だぞ?』


馴れ馴れしい名前つけるな、と手を振る。
炯斗はどっかり地べたに座り込んで、ファントムに尋ねる。


「なぁ、ここは何処だよ?」

ファントムに座るよう示したが、彼は炯斗に背中を向けた。

『答える必要はない』

「ケチ」

しかし、その背中がこちらを向くことはない。


『言っただろう。お前をここに招くつもりはなかった』


――来ちゃったし

そんなこと、言える雰囲気ではない。

『出たければ、自分でどうにかするんだな』

それだけ言うと、ファントムはそのまま歩き出した。


「あ、おいちょっと――!」


炯斗が立ち上がりかけたその時、フッと消えてしまった。




しばらくして、その境目を飛び越えてみたが、現状は変わらず。


再び無人の街に炯斗の悔しそうな叫びが響いた。

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