悪魔のようなアナタ【完】



「ちょっと立て込んできちゃって……。お茶出し手伝ってもらってもいい?」

「はい、わかりました!」


灯里はパンフを置いて受付の奥へと入った。

奥には簡易給湯器が置いてあり、紙コップを置いてボタンを押せばお茶が入るようになっている。

灯里は首を伸ばし、商談スペースの様子を確認した。

今のところ商談客は10名。

灯里は手早く紙コップにお茶を注ぎ、お盆に載せた。

そのままお盆を手に商談スペースに入り、客の前に笑顔と共に出していく。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


お茶を出す灯里の後方で晃人がパンフを手に慣れた様子で商談をしている。

昔から晃人は交渉ごとに強く、昔一緒に遊んでいてたまに言い争いになった時も灯里はいつのまにか晃人に言い包められていた。

しかも心の底から納得し、『晃くんてすごい』とまで思わせるのだから恐ろしい。

その恐ろしさは玲士とどこか通じるところがあるような気もする。

玲士の恐ろしさはそれでも目に見えているが、晃人の場合は相手に気付かせずサラリと行うため考えようによっては玲士より恐ろしい。



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