悪魔のようなアナタ【完】



やがて30分ほど過ぎた頃。

受付カウンターと商品ブースを行き来していた灯里を晃人がこっそりと手招きした。

どうやら商談は無事に終わったらしい。


「今年は相当混んでるな」

「うん……じゃない、そうですね」

「お前、昼は取ったか?」

「いえ、忙しくて。14:00から説明なので終わったら取ろうかと思ってます」


灯里の言葉に、晃人はその形の良い眉を顰めた。


「大丈夫なのか?」

「はい、大丈夫です。後で休みますから」


晃人が心配そうに灯里を見る。

その眼差しは昔から変わらない。

晃人の眼差しはいつも灯里を優しく包み込み、安心させてくれた。


けれどもう、晃人と自分は立場が違う。

いつまでも晃人に心配をかけるわけにはいかない。

灯里は『大丈夫です』と目で笑いかけ、ぺこりと頭を下げて晃人の傍を離れた。


< 150 / 350 >

この作品をシェア

pagetop