悪魔のようなアナタ【完】



「あの女……」


晃人の瞳が冷徹な光を帯びる。


――――河瀬美奈。


あの女は説明会の前、脚立に何かしていた。

しかも灯里が倒れた後、脚立を受付の奥にしまったのはあの女だ。

データの件にしても今回の件にしても、何かあるとあの女が絡んでいる。


晃人の目が刃のような鋭さを帯びる。

――――灯里や他の社員の前では見せたことのない、昏い刃物のような目。


会長の親族と言えど、この歳で取締役になったのにはそれなりに理由がある。

このご時世、甘さを見せればそれはそのまま会社の弱みになる。


ましてや河瀬のように、自社に損害を与えるような人間を放置しておくわけにはいかない。


晃人は唇を歪めてクッと笑った。

その瞳によぎる光は鋭利な刃のように鋭い。


「今回までは様子見だ。しかし今度、何かあれば……」



――――処分する。



晃人は目を伏せ、ゆっくりとグラスを傾けた……。



<***>

< 174 / 350 >

この作品をシェア

pagetop