悪魔のようなアナタ【完】



灯里は頭上の桃を眺めながら、じっくりと一つ一つ見ていった。

どれも美味しそうに見えてしまう。

制限時間は一時間だ。

あまり選ぶのに時間をかけてしまうと食べられなくなってしまう。


「どれがいいかなー……」


と、頭上の木の枝を見上げた時。

とても美味しそうな色をした桃を見つけ、灯里は目を輝かせた。

大きすぎず小さすぎず、赤く熟して下の方は白い。


「よっ……と……」


灯里は必死に手を伸ばしたが、高いところにあるため取ることができない。

勢いをつけてジャンプしてみても微妙に届かず……。


「あ……あれっ……」


と何度かジャンプしたとき。

灯里の後ろからひょいと手が伸び、その桃をあっさりともぎ取った。


背後から甘いウッドノートの香りがふわりと香る。

ぴしりと固まった灯里の頭上でくすりと笑う気配がする。


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