悪魔のようなアナタ【完】

7.悪魔と蕎麦打ち




午後。

山形市内の蕎麦屋に入った一行は4人ずつの班に分かれて蕎麦打ちを始めた。

班はくじ引きで、灯里は経営企画室の都筑さん、商事部の清水さん、そして山岡課長と同じ班になった。

女三人に男一人となってしまったため、蕎麦打ち役は自動的に山岡課長となった。


「それではここで、水を加えます」


皆の前で白髪交じりの店主が慣れた手つきで実演を行う。

蕎麦打ち初体験の灯里は、興味津々といった目で店主の実演を眺めていた。


「あっ、灯里ちゃん、水は……」

「水ですね、ハイ」


灯里は慌てて捏ね鉢の横に水の入ったピッチャーを置いた。

山岡課長はピッチャーを取り、捏ね鉢に水を灌ぐ。


「課長! 水は分けて入れるみたいですよ」

「えぇっ!?」

「のの字を描くように……とか言ってますよ」


灯里は店主の実演でやり方を確かめようとするが、人だかりができているためなかなか見えない。

と、隣の班を見ると。


玲士が無言で生地を捏ねていた。

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