悪魔のようなアナタ【完】



「……」


まるで毒薬か何かを捏ねているかのようなその光景。

その捏ね鉢の中に血や肉が入っていたとしても灯里は驚かないだろう。


玲士の班は香川さんと美奈、そして秘書室の来島さんだ。

灯里の班と同じく男一人になってしまったようで、玲士が蕎麦打ち担当になったらしい。

しかしよくよく見ると、他の班に比べて格段に手際が良い。

他の班が水を入れている段階で、玲士は既に生地をまとめ始めている。

その横で美奈が目を輝かせて玲士を見つめている。


「すごいですね、水澤先輩っ」

「……」

「蕎麦打ち、やったことあるんですか?」


可愛らしい顔を輝かせ、美奈は玲士の顔を覗き込む。

二人の姿に灯里は胸の奥がチクッと痛むのを感じた。

――――なんだろう、これ。



< 225 / 350 >

この作品をシェア

pagetop