悪魔のようなアナタ【完】



晃人の言葉が玲士の胸に突き刺さる。

確かに今の玲士には何の権限もない。

人事権や決裁権は管理職にならなければ持つことができない。


「今の君はどれだけ能力があろうとこの会社では平社員だ。どれだけ頑張ろうと、管理職になれるのは10年以上先だ」

「……っ……」

「もし万が一、灯里が君を選んだとしても、その現実は変わらない」


玲士は晃人の言葉に背筋を強張らせた。

確かに晃人の言うとおりだ。

もし灯里を手に入れたとしても、この会社では晃人の方が遥かに権限がある。

自分の愛した女が他の男に庇護されるなど、考えただけでぞっとする。


「前にも聞いたが、もう一度聞こう。……君はなぜ、この会社を選んだ?」

「……」

「君が戦うべきフィールドはここなのか? 君の能力を発揮するべき場所は、この会社なのか?」


晃人の言葉が鋭く胸に突き刺さる。

玲士は視線をそらし、すっと瞳を伏せた。


――――これまで見ようとしなかった現実。



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