悪魔のようなアナタ【完】



晃人は灯里の前に立ち、頭の先からつま先までじっと見下ろした。

その視線の先で灯里はぴしりと固まっていた。

――――10年ぶりの再会。


別人のようにカッコ良くなった晃人に比べ、自分は子供の頃とあまり変わらない風貌だ。

しかも晃人は取締役で、自分はヒラ社員。

かつては隣同士だったのに今は天と地ほどに遠い。


昔は『晃くんっ』とすぐに飛びついたのに、今は言葉一つ出すことができない。

晃人はそんな灯里をまじまじと見つめ、目を細めて言う。


「変わらないな、お前は」

「……晃くん……」

「まさかお前がこの会社にいるとはな。この間の集会の時、かなり驚いたぞ?」


どうやら晃人もあの時灯里に気付いていたらしい。

まるでそうは見えなかったのだが……。


何と言えばいいのかわからない灯里に晃人は優しく笑った。

あの頃よりだいぶ精悍で大人っぽい顔つきになってはいるが、微笑みは変わらない。

――――小さいころから親しんできた、懐かしい笑顔。


< 34 / 350 >

この作品をシェア

pagetop