悪魔のようなアナタ【完】
思わずぼうっと見上げていた灯里だったが、はっと我に返り慌てて視線を逸らした。
「あっ、すっ、……すみません、取締役……」
「何だ、お前らしくないな。晃人でいい。会社では一応取締役と呼べ」
「え、でも……」
まごつく灯里の頭に晃人はそっと手を置いた。
大人の男性にふさわしい、スパイシーなブラックティーの香りが灯里の鼻先をかすめる。
大きくがっしりした手は昔から変わらない。
が、その右手の薬指には指輪がある。
恐らく結婚しているか、婚約者がいるのだろう。
「今日はあいにく時間がない。今度、どこかで会おう」
「う、うん……」
「俺の連絡先だ。後でここにメールをくれ」