悪魔のようなアナタ【完】



「あの、水澤くん。頼みがあるんだけど」

「却下」


話を聞かないうちからさくっと切られ、灯里は思わずぽかんとした。

玲士は唇の端に酷薄な笑みを浮かべて灯里を見る。


「おれ、忙しいの。月末に株主総会があるって知ってるでしょ?」

「…………」

「そんなおれが、なんでお前を助けなきゃならないわけ?」

「……っ」

「じゃあね、灯里」


玲士はひらひらと手を振ってその場を離れる。

灯里は唖然とその背を見た。


――――悪魔は予想以上に手強かった。

悪魔に魂を売る前に、悪魔の方から断られてしまうとは……想定外だ。


しかし株主総会を盾に出されたらどうしようもない。

株主総会は会社の年間行事の中で最も大事な対外向の行事だ。


灯里はがくりと脱力し、とぼとぼと階段を下りて行った……。

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