永遠の愛

「あ、あのさ美咲…」

「うん?何?」

「なんとなく分ってると思うけど、芹沢さんの事…」


そこまで言った葵は視線を逸らし息を飲み込む仕草をする。

言いにくそうなその感じ。

言いにくそうに途惑ってるその表情。


だから。


「どうしたの?」


素っ気なく返してしまった自分がいた。

分ってんだ。

今更どうにもならないって。


今更何言われてもどうにもならないって事くらい、分ってる。


「あたし…芹沢さんが入院してた事しらなかった」

「…え?」


反応的に出した声だった。

葵、知らなかったの?


「この前、…この前ね。夜に呼び出したの美咲でしょ?」

「あー…」

「で、帰って来た諒也が電話してる会話聞いちゃってさ…」

「……」

「なんか全然訳分かんない会話でさ、…でも後で問いただしても諒也、何もいわないんだよ!」

「……」

「それどころか、お前には関係ないって!ありえなくない?美咲の気持ちも考えろっての!」


自棄に葵が反抗して頬を膨らませるその姿に、何だか聞く前よりもあたしの顔に笑みが零れた。

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