永遠の愛

「珍しい。どうしたの、葵?」

「どうしたじゃないじゃん。諒也最悪だよ!」

「えっ、ちょっと待って。もしかして喧嘩してる?」

「…え?」


小さく呟いた葵の目の動きで何となく分かってしまった。


「やっぱし…」

「そ、そんな事ないよ、ただの言い合い」

「それ多分、喧嘩の内。ごめん、変な事に巻き込んじゃって」

「ち、違うよ。美咲じゃないから。でも…あたしにも言ってほしかった。ここに居るって事はマンションに行ってないんでしょ?芹沢さん、大丈夫なの?」


声のトーンを少し落とした葵はマグカップからゆっくりとあたしに視線を向けた。


「さぁ…」

「さぁって…会ってないの」

「当分会いたくないから」

「え?どう言う事?」

「翔にはもっと相応しい人がいる。ただそれだけ」


素っ気なくそう言って、あたしはやけくそにバームクーヘンをフォークで刺し、口の押し込む。

折角くれたバームクーヘンの味までもがよく分らない感じだった。


ただ、今のあたしは苛々してるだけ。


「え?それってどう言う意味?美咲、もしかして別れた?」

「さぁ…」

「さっきからそればっか」

「いずれはそうなるかもだし、今はまだ分んない」

「いずれはそうなるって、距離置いてんの?」

「うん」

「何で?」

「何でって置きたいから。今はただ…考えたいの」

「そう…」


両手でマグカップを持った葵は口に近づけてゆっくりと飲む。

その表情は見てるだけでも分かる寂しそうな目をしてた。



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