永遠の愛

「正直…なんつーのかな、」


波の音を聞いてると、不意に聞こえた翔の声に視線を向ける。

翔は真っ直ぐ海を見つめてて、瞳を動かそうとはしない。


「…うん?」

「ここでさ、美咲に行って来いって言ってさ…」

「うん」

「5年って、あっという間とか言ってたけど、正直長かった。こんなに長いとは思わなかった」


思い出した事があった。

あたしが旅立って3年目の4月の春。


丁度、翔が27歳の誕生日だった。


“おめでとう”って言うあたしに、“会いたい”って、“今から行こうかな”って、そう寂しそうに言った。

でも翔は寂しさを掻き消す様に、“冗談”って笑ってた。


電話越しから聞こえてくる笑い声は悲しそうで寂しそうだった。

だから、あたしはその時、何も言えずにいた。


“あたしも会いたい”って言ってしまうと、翔に負担をかけてしまうと思ったから。


でも、翔は“会いたい”って、その言葉をそれ以降は言ってこなかった。


だから、たった一回の“会いたい”って言われた言葉が、時たま頭から離れずにずっといた。


「…ありがとう。待っててくれて」


そう言ったあたしに翔は笑みを漏らし口角を上げた。
< 37 / 625 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop