永遠の愛

「渡すだけでいいんですよね?」

「はい、お願いします」

「名前は…」

「…渡せば分ります」


それだけ伝えたあたしはその場を離れて病院を後にした。


“渡せば分ります”

そう言ったのは名前なんて言いたくなかったから。


翔があたしだと分ってくれる確率は分んないけど、とにかく翔の手元に行けばいいと、そう思った。


その日の夜。

何気に掛けた電話を持つ手が少しだけ震えてた。


「…美咲ちゃん?」


相変わらず明るく伝わって来る菜緒の声。

掛けた以上、迷ったりなんてしたくなかった。



もう、ここから離れたくて、離れたくて、何も考えたくなくてどうしようもなかった。


「…菜緒?」

「美咲ちゃん、元気?」

「菜緒は?」

「あたしは元気に決まってるじゃん」

「そう…」

「ところでどうしたの?元気ない声だけど」

「あたし…あたしそっちに行こうと思う」

「そっちって、ここに来るって事?」

「そう。日本語講師の事だけど、やろうと思うの」



5年間で学んだことは全て学んだ。

けど、それよりも、もっと学べたらいいと思うあたしの選択だった。





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