永遠の愛

「美咲、別にいいのに」


不意に聞こえた葵の声に、持っていたオモチャをテーブルに置く。


「いいよ。香恋ちゃん、食べるかなって思っただけだから」

「ごめんね」

「ううん」

「それよりどうしたの?美咲が突然来るなんて珍しいじゃん」


葵は箱に入っているシュークリームを一つ取り出し、その袋を開けると香恋ちゃんに差し出す。


「うん」

「うんって、何?何かあった?」

「ううん、別に」

「別にって…」


困った表情を浮かべた葵はもう一度キッチンへと向かう。

そしてすぐに来た葵は手にしていたマグカップを2つテーブルに置いた。


「ただ香恋ちゃんに会ってないなーって、思って」


葵の隣でシュークリームを美味しそうに頬張る香恋ちゃんを見て、思わず笑みが零れる。


「ふーん…、そんな風には見えないけど」


そう言って、葵は納得がいかない様子を浮かべる。


「…私、定時辞めようと思って」

「え?」


突然言い出した私の言葉に、葵は香恋ちゃんから素早く視線を私に切り替えた。
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