俺様or激甘彼氏はいかがですか?


保健室を出て行った乃亜って子に、残された俺と彼女。
彼女が道具を片付ける音だけが響く。


気まずい……。
静かな空気を破ったのは、彼女だった。



「…さっき、ありがとうね」
「……え?いや、何か体が勝手に…」
「優しいんだ!」
「えっ……」


戸惑う俺の前の椅子に座り、ニッコリ笑顔を向けた。


「あたし、山本梨華!あなたは?」
「…井上智也」
「智也ね!中学入って初めての友達だね!」


友達………。

こそばゆい響きになんか照れる。


「あたしの事は梨華って呼んで!あたしも智也って呼んでいい?」
「…うん。いいよ」
「じゃあ智也!助けてくれてありがとう!」


差し出した……梨華、の手を、そっと握り返す。
その時の手の温かさは、今でも覚えている。




綺麗な見た目に似合わず、男らしい君。
梨華との出逢いは、こんな感じで始まった。
同時に、梨華への恋も始まってたんだ………。






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