嘘つきヴァンパイア様


「まだ、少し意識があやふやみたいね。ここは病院よ」


「病院?」


「そう、バイクと軽い接触事故を起こしたのよ。覚えてるかしら?」


(接触、事故?)


記憶の欠片をさぐると、なんとなく浮かび上がる記憶。


(そうだ、楓と横断歩道を渡ろうとしたら走って来たバイクと衝突したんだ)


「運が良かったわよ。軽い打撲とかすり傷だったから」



看護婦の言葉に体を起こす。手足を見れば所々に包帯が巻かれていた。

腕には点滴が施され、頬には白いガーゼがテープで止めてある。

手で触れれば僅かに痛みが走り、顔を歪めると看護婦は慌ててそれを制しした。


「無理して起きなくても大丈夫よ。あ、そうだ、一緒にいた女の子も無事。彼女は早くに意識取り戻して怪我の手当てをして帰ったわ」



「楓が?」


「えぇ、本当は涼子さんが起きるまで居たかったらしいけど、親御さんが迎えに来てくれて連れて行かれたの」

「そう、なんですね」

「えぇ」

「ちなみに、涼子さんの親御さんにも連絡したら、明日の始発の新幹線で来るって言ってたわよ。今日はこのまま一日入院してね。もう遅いし精密検査がまだですから」


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