嘘つきヴァンパイア様

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それは、ずっと、ずっと…ずっと昔のこと。


とある神は、人間と神の間に戦争を引き起こした。その争いは何日も続き、沢山の犠牲者がでた。


どれくらいの者が、涙を流したのだろう。それは、もう、途方のない悲しみに満ちた戦争。


広がる大草原は真っ赤に染まり、息絶えた者がそこらじゅうにいる。


その中、その神は懸命に戦っていた。憎かったのだ、悔しかったのだ。そして、苦しく、切なく…とても、寂しかった。



『あぁ…カトレアよ…どうして、お前はこんなにも冷たいんだ…なぜ、私を止めに来たのだ…わたしは…お前の為に…この戦争を起こしたのだ…お前がいないのならば、なんの意味のない…』


横たわる女性を抱き上げ、その胸元を大粒の涙でぬらす。


だが、再び彼女が目をあけ、男の名を呼ぶことはなかったのだ。

それは、とても、つらい…天界の始まりと終わり。

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