政略結婚 ~全ては彼の策略~
この時を待っていた


****


"その日"は突然やってきた。


「神崎、仕事が終わったら少し話があるんだが大丈夫かな?」


社長からの誘いは珍しくない。
悟は「承知致しました。」と告げる。



社長がまだ副社長であった時期から悟は部下として働いてきた。
他の同僚に比べるとかなり贔屓(ひいき)してもらっている事は分かっているが、社長からの悟の扱いに批判が出た事は今のところ無い。


社長が"何故"悟をこんなにも"可愛がって"いるのか直接言われた事はないが大体の予想はついていた。

他の社員は、悟の学歴もさることながら仕事での能力も高いため気に入られているのだと思っているようだが本質は少し違う事を悟は理解している。

だが、悟もそれを利用していた。
同僚からも不審がられないよう仕事にも熱を入れており、実際に成果も上げている。
29歳の頃、異例とも言える早さで課長職を任された。それからも順に昇進していき35歳からは社長秘書として社長の補佐役として働いており、社長職の仕事内容を常に最も近くで学べている。

自身でも現在までポジションに見合うよう、それなりに他の社員には負けないくらい勉強もしてきたつもりだ。




< 16 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop