政略結婚 ~全ては彼の策略~

幸い悟には兄が2人おり、2人とも悟を気にかけてしょっちゅう遊びに連れ出してくれた。
兄弟仲は良く、今までも悟は兄達を尊敬している。

父親は多忙でなかなか家にいる時間はなかったが、母親よりは遥かに3人の子供を心配して使用人達に色々と指示を出しているようだった。
母親に頼んでも意味のない事を分かっていたのだろう。

それでも父親は母親をそれなりに大事にしているため、悟には今でも理解出来ない。


結局のところ、父親も子供の世話は出来る人間に任せればそれでいいのだ。
適材適所という言葉がぴったりである。

そういう事もあり、悟はあまり実家が好きではない。
兄とは会うことが多いが、両親とまともに会話をしたのはいつかも思い出せない。


父親の事は社会の先輩としては尊敬している。
だが、自分があの場所にいたいとはとてもではないが思えなかった。

兄達はあまり気にしていないようで、そこは父親に似ているとも言える。


悟は社長という肩書きには全く興味は無かった。
出来るだけそういう立ち位置には立ちたくないとさえ思っていた。


それでも彼女を見つけてしまった。

彼女を欲しいと思ってしまった。

彼女を手に入れる事が出来るのならば、嫌厭(けんえん)していた社長というポジションになる事にも抵抗なく受け入れる事が出来る。


こんな女性をずっと探していたのだと、優香と出会って知ったのだ。
この気持ちを止めることは出来なかった。





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