黒水晶

考えなくてはならないことや、振り返りたい事がたくさんある。

だが今は、黒水晶の行方やガーデット帝国がどうなってしまったのかを考えるのが先だった。

“このままじゃ、世界が……!”

こんなにもマイの体が重たい理由は、ただひとつ。

“こうなったのも、黒水晶の力を暴走させたせいだ……。

黒水晶の力は大き過ぎてコントロールしきれないし、私の体にも負担がかかりすぎてた。

それだけじゃない……。

私が、自分の能力を黒水晶にシンクロさせたせいで、ガーデット帝国の人達は……!”

ガーデット帝国の人々。

テグレン。リンネ。

みんながどうしているのかを知りたかった。

それだけではない。

“イサ……!!”

彼はどうなったのだろう。

父を亡くし、剣術を叩き込んでくれた師範·カーティスを失い、彼はどのような心境で今を生きているのだろう。

マイが黒水晶を使ったことに対し、彼は何を感じていたのだろう。

イサに会いたい。

その一心で、マイはベッドから抜け出した。

両手に汗をにぎり、渾身(こんしん)の力を振り絞る。

思うように動かない体は、ややベッドからはみ出したものの、その直後、強い衝撃音と共に床に叩きつけられた。

「イタっ!!」

ベッドから床までの高さは、マイの腰ほどある。

床に転がり落ちたマイは、痛みでしばし身をよじった。

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