黒水晶

3 永遠に会えなくても



マイはこれから、イサと共に国を引っ張っていく立場にある。

ゆくゆくは、王妃になるだろう。

……コエテルノ·イレニスタ王国の人々にはそう思われ、期待されているマイだったが、彼女の心の内は違っていた。


“イサ。ごめんね……。

国民の皆さん、ごめんね。

私は…………”



花壇でイサと話した翌日。

下弦の月が夜空に浮かぶ頃、マイは、コエテルノ·イレニスタ王国をそっと後にした。


誰にも、別れは告げていない。

旅立ちの決意が鈍るのが怖いからだ。


マイの動向に気付くひとつの影があった。

「行ってしまわれるのですね……。

ルミフォンド様……」

フェルトは月光に照らされた城の頂上から、遠く離れてゆくマイの姿を見送っていた。

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