毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
『織田 信長』って言った?

 私は皮膚が裂けんばかりに目を見開くと、振り返る。

 私を抱きしめている男の顔を見る……が、学校の教科書で見たような風貌とは違う。

 歴史の本にあったようなちょび髭が無いし。

 織田信長……おだ、のぶなが。

 ってことは、私はタイムスリップしたってこと?

 いや、違う。夢だわ。そう…事故にあって、きっと私は夢の中にいるのよ。

 人間が過去に行くなんて出来ないもの。

 混乱する頭が、必死に整理しようとする。けれどもズキンと痛みが走った。

「いたっ」と私は頭をおさえた。

「傷だらけだな。砦で、すぐに治療させよう」

 低くて喉仏にかかる声が、私の耳元で聞こえてくる。

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