毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 膝からガクリと地面に身体が落ちて行く。

「もう、駄目だ……」と私は小さく呟く。

 かなり頑張ったのにな。

「乗れ。さすれば助けてやる」

 透明感のある低い声に、私は顔をあげた。

 馬に乗っている男の手が私に向かって伸びている。

 助けてくれるって言った?

 私は男の顔を見つめる。逆光で、顔がわからない。

 これ以上は無理。走れないし、逃げたところで馬に勝てるはずもない。

 私は何のためらいも無く、馬に乗っている男の手を握りしめた。

 暖かい手だった。ぐっと男の腕に力が入る。腕に筋が入り、私は軽々と男に引き上げられた。

 なんてパワーなの?

 私は馬上に乗ると、すっぽりと男の胸の中におさまった。

「勝利の鍵は、我が織田 信長の手中にあり!」

 私を引き上げた男が、大声をあげた。

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