毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―

「え？　なに、ここ……どこ？」

　私は瞼を持ち上げて、飛び込んできた景色に目を疑った。

　木漏れ日が眩しくて、目を細めた。

　大木に囲まれた場所で、私は倒れていたみたい。

　でもどうして？

　私は身体を起こすと、両手について土をジッと眺めた。

「な、んで？」

　手のひらには、土と小枝がついていた。私はそれを払うと、肺いっぱいに空気を吸い込む。

　少し湿り気のある空気だ。でも澄んでいる。

　空気の味なんてわからない私だけど、こういうのを美味しいって言うのだろうって思う。

　何にも侵されていない空気。自然豊かな場所だからこそ吸える空気というべきか。

　私は身体中についている土や小枝、枯れ葉を払いながら立ち上がる。

　吐き慣れている７センチのヒールだけど、柔らかい土の上では不安定で、真っすぐ立つのも一苦労だ。

　どこか整備されている道に出ないと。