毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 でもどうやって? どこに行けばいいの?

 私は周りを見渡す。けれども、視界に入る地面は柔らかそうな土ばかり。とても人の歩けるような場所ではなさそうだ。

 なんで私はここにいるの?

 私は思い出そうすると、ズキンと痛む頭を軽く抑えた。

 まるで濃霧に包まれているように、記憶がはっきりしない。

 考えようとするだけで、頭が割れそうに痛くなる。

 私は「ふう」と長く息を吐きだすと、空を見上げた。

 ここはどこ? 私はなんでここにいるの?

 誰か、教えて。

 心の中で、叫んでみる。

 答えなんてかえってこないと、わかっているけれど。言わずにはいられない。

「いたぞ、ここに」

「おかしな格好の女だ」

「義元様の言っていた女か?」

 数人の男の声がして、私は振り返った。

 なに? 変な格好なのは、そっちじゃない!

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