毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 若さがどれだけの魅力になるか……私だって経験してきている。

 経験だけして、通り過ぎてしまった己が悔しい。

『若いね』と言われている間に、人生の伴侶を見つけておけば良かったと、戻らない時に後悔してるんだから。

「そうだったな。だが、お前の婚約者と一緒の括りにして欲しくはない。儂は儂だ。儂は人を騙すことはあっても、嘘はつかん。とくにお前には嘘は言わぬ。絶対にな」

 信長が私の肩をもって、顔と顔の距離をあけると真っすぐに見つめた。

 最初に見たときにも思った力強い瞳が、私を捉えている。

 嘘は言わない。その言葉がすんなりと私の心に染み込んでいく。

 私を裏切った聖とは、年は近くても信長は違う。

 真摯に私を受け止めてくれそうな気がする。

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