毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 私は服も格好も、姿勢も気にせずに、ただ必死に登った。

 坂の頂点に手が届いたとき、「ヒヒン」と動物の鳴き声が聞こえた。

 まだ……終わりじゃない!

 私は身体を起こすと、太陽の光で眩しくて目を細めた。

 逆光で目前に迫るモノがはっきりと見えない。

 けれどなんとなく、シルエットがうかがえる。

 時代劇で見る光景だ。見覚えがある。

 そう。これは……。

 馬に人が乗っているときの影だっ。

 私はがっくりと肩を落とした。

 馬には勝てない。この人からは逃れられない。そう感じると、全身の力が一気に抜ける。

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