毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
どすどすどす、と廊下から荒々しい足音が聞こえてきた。
いつも以上に音が響いている。これは相当、怒っているようだ。
「初めに言っておく。儂はかなり怒っておる!」
襖を勢いよくあけるなり、私に向かって信長が大きな声をあげた。
「わかってます」と私が返事をする。
きっと濃姫との話が耳に入ったのだろう。
清州城は信長の城だ。誰もが信長のために働き、そして信長のために生きている。
城内で起きた大抵のことは、信長に入るに決まっている。
それが正妻や、愛人、側室のことならなおさら。
「腹立たしくて、信包の尻を蹴ってきたが。それでも腹の虫が治まらんくらいに怒っておる」
「それはどうかと思いますけど」
「それくらい儂の腸が煮え繰り返っておるってことだっ。お前は、儂が信じられぬのか。儂のやることが気に入らぬのか」
信長が私の肩を強く掴むと前後に激しく揺さぶった。
いつも以上に音が響いている。これは相当、怒っているようだ。
「初めに言っておく。儂はかなり怒っておる!」
襖を勢いよくあけるなり、私に向かって信長が大きな声をあげた。
「わかってます」と私が返事をする。
きっと濃姫との話が耳に入ったのだろう。
清州城は信長の城だ。誰もが信長のために働き、そして信長のために生きている。
城内で起きた大抵のことは、信長に入るに決まっている。
それが正妻や、愛人、側室のことならなおさら。
「腹立たしくて、信包の尻を蹴ってきたが。それでも腹の虫が治まらんくらいに怒っておる」
「それはどうかと思いますけど」
「それくらい儂の腸が煮え繰り返っておるってことだっ。お前は、儂が信じられぬのか。儂のやることが気に入らぬのか」
信長が私の肩を強く掴むと前後に激しく揺さぶった。