彼女は予想の斜め上を行く
遼生の言うことは間違いない。

確かに屁理屈だし。

こんな真夜中に押し掛ける客は、ごめんに決まっている。

それでも俺には、今からでないといけない理由があるわけで。

「ごめんな?遼生」

美容室の鏡前に置かれた椅子に座っている俺は、隣に立っている遼生を見上げて言った。

「つーか、なんでいきなり髪きるとか言い出したわけ?」

遼生には、金本さんのことを以前から何となく話してあった。

だから、俺は話した。

物凄く情けない俺と物凄く強烈に怒ってた金本さんの間に起きた話を。



―――「うわっ。勇人、ヘタレ過ぎ」

先程までの不機嫌な顔とは、一転。

俺の話を聞き終えた遼生は、ケラケラと笑っていた。

笑いながらも、手に握るハサミはしっかりと動き、俺の髪は床に落ちていく。

一方の俺はというと。

「……………チッ」

幼なじみにまでヘタレ呼ばわりされて面白いわけもなく、思わず舌打ちをしていた。
< 137 / 251 >

この作品をシェア

pagetop