彼女は予想の斜め上を行く
遼生はそんな俺を気にすることもなく、ハサミを相変わらず軽快に動かしながら言った。

「ヘタレな上に鈍感とか、救いようがないな」

俺の舌打ちも失礼だが、こいつのこの言葉もなかなか失礼極まりない。

「………そんなに俺って、鈍感?」

「あっ、そういえば鈍感で思い出したんだけどさ~」

質問に答えろよ。

しかも、鈍感というワードで思い出すようなことって……。

絶対に、ろくでもないことに違いない。

俺が眼で遼生に訴えた思いは、恐ろしく的中していた。

「リオちゃん。仕事辞めて、こっちに帰って来るらしいぞ?」

―――莉緒。

その名前に、心拍数が上がったのは。

きっと、絶対に、気のせいだ。

「莉緒の話は、いいよ…」

弱々しく掠れた声でその名前を口にした俺を、遼生はハサミを動かす手を止めジッと見ていた。

「……なんだよ?」

「ん~?別に?」

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